秋のひとり旅

秋到来を待っての

一泊二日のひとり旅…

広島へ行ってきた。

1つ目の目的。

大田洋子の『屍の街』

を読了したのをきっかけに

原爆ドームを含めて太田川付近を

歩いてみたかった。

平和記念資料館、平和公園、

原爆ドームを巡って

そして

大田洋子が被爆後、母や妹と

３日間野宿をしたという

神田橋から河原を見下ろした。

河原には人影もなく

秋の日が穏やかな川面に射して

きらきらと光っていた。

平和公園付近には

あふれんばかりの外国人、

特に西洋人の姿が多かった。

資料館は４度目だったけれど、

子どもたちが小学生の時が最後だったので

40数年も経過していたのか・・・

デジタル化が進み、

近代的に様変わりしていて驚いた。

少し離れた場所にある

大田洋子の石碑も訪れてみた。

碑文には『屍の街』の一節が刻まれている。

「少女たちは天に焼かれる天に焼かれる

と歌のやうに叫びながら歩いて行った」

戦後80年が過ぎて

平和ボケしたような現実と

80年前の惨状とが

うまく結びつかない

あせりに似た気持ちに陥って

しばし茫然としてしまった。

◇

◇

◇

翌日は2つ目の目的。

「ひろしま美術館」で開催されている

没後40年を記念しての「鴨居玲展」

鴨居玲は

視覚に映らない

見えないものを描く

孤高の画家である。

酔っ払いを描いても

教会を描いても

その奥に秘匿したものを

抉り出して絵筆に乗せていく、

自画像も

決してなだらかには描かない

眺めていて

画家の懊悩が伝わってきて

息苦しくなるような作品の数々である。

これでは長く生きられないだろう、

と思わせる

滅びゆくような切羽詰まった自画像が

最後に遺されていたようだ。

諷刺画風の作品には

室町時代の歌集『閑吟集』から材を得た

「狂候えよ」というタイトルに

この歌が添っていた。

「憂さも一時　嬉しさも　思い覚ませば　夢候よ

何せうぞ　くすんで　一期は夢よ　ただ狂へ」

鴨居玲の生き様そのもののようだ。

アルコールと睡眠薬で

現実逃避と自殺未遂を

繰り返しての最期だった。

享年57歳

合掌🙏