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ひとり身の終末

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娘が東京から当地に移住して丸3年になる。

不定期出張はあるが、
自宅でリモートワークが基本の形態である。

先週、仕事を兼ねて上京していたが、
いちばんの目的は
T病院に同僚Uさんを見舞うことだった。

彼は同じ部門にいた期間がある上、
社内の趣味の部の仲間でもある。

部員の結束は固く、
独り身のUさんのため
かつての部員たちが交代で
必要なもの持参で見舞っているそうだ。

遠地にいる娘も食べられそうなものを
定期的に送っているという。

夫と同じ時期に同じ血液がんを発症し、
再発再々発ののちの今である。

再発時に日本で未認可の抗がん剤を投与したが
半年後に再々発した。

一人っ子の彼は独身のまま今を迎え、
入退院当初は従兄弟を頼っていたが、
お金がらみの思惑に疲れて遠ざけたという。

今も一時凌ぎの抗がん剤を続けながら、
弁護士と相談して遺言書を作成、
葬儀の段取りも終えたという。

当日、病室に娘を含む部仲間4人が
集まって思い出話に花を咲かせたそうだが、
遺言書の中身に話が及んで彼の決断を知ったという。

たまたま知った子どもたちの
闘病の様子に胸を打たれ、
未来ある子どもたちのためにと
A病院にほとんどの財産を寄付をするという。
すでに院長とも面会して伝えているそうだ。

葬儀ではクラシック命の彼らしく
お気に入りの音楽を流し、
最後の出棺時には娘の弾くショパンのlargoを
流すのを許可してほしいといったそうだ。

そういえば、
入院中のつれづれの慰めになればと、
「拙くて恥ずかしいけれど」と
largoを送ったことがあるそうだ。

◇   ◇   ◇

先行きに閉塞感を感じる若者が多いという昨今
結婚して子どもを作るという選択肢を外し
未婚のまま人生を閉じる人が
年々増えているという。


家族がいても心が満たされない孤独もあるし、
ひとりでも幸せな生もある。

ひとりの終末でも
安心感の下に旅立つことのできるような
社会的な受け入れができてほしいと強く思う。


八月の薄ら明りに背を向けて
一人より深い二人(ツヴァイ)の孤独(ザムカイト)
上田由美子





Commented by カロン at 2025-11-27 09:41
VINさん、おはようございます。

お嬢さまの同僚の方は血液癌ですか。
いつも再発のリスクがつきまとう癌で、さぞ不安が尽きなくて大変だとお察しします。

ご主人も同じ血液癌だったんですか。
再発がさぞ心配だったことでしょう。

お嬢さまの同僚のUさん、考え抜いた末の決断でしょうが、ご立派な決意ですね。
最後に流す曲は「ショパンのlargo」ですか。
それも同僚のお嬢さまのピアノで!
荘厳な曲ですよね。
ご主人のときは、「英雄」だったように記憶していますが、私の記憶違いだったらすみません。

たしかに家族がいても満たされない孤独はありますね。
「自分は必要とされていないのではないか」と感じたとき、人は寄る辺なき孤独に襲われるのではないでしょうか。
安心して、充足感のうちに旅立つことができたら、それがいちばん幸せかもしれませんね。
Commented by ゆり at 2025-11-27 13:49
VINさん、こんにちは。

Uさんという方は素晴らしい方なのですね。
お嬢様を含む、その会社の方々も!!素晴らしい!

ご近所で親の相続の争いを見てきております。
お話をお聞きする限り、親族どなたも幸せとは言えない状態です。

Uさん、お仲間に囲まれ、お嬢様の弾いた曲で見送られる・・・
短すぎる人生ですが・・・Uさんにとって生き切った感がおありかも。
ご立派な人生ですね。

大勢に見送られなくも、立派な葬儀をしなくも、静かに周りに「感謝~」といければ・・・の私ですが、
まだまだ生きていてくれ~ですので頑張らねば。
Commented by VIN0418 at 2025-11-27 19:27
★カロンさん、コメントありがとうございます。
その後検査の結果はいかがでしたか?
心配な結果でなければありがたいですが。
まずはカロンさんnoteのご紹介を本当にありがとうございました。
慎んで拝見させていただきました♡
相変わらず文章全体が静かな音楽のような流れで添付の写真も詩のような文に添った美しいもので見とれました。
昨日すべて拝見させていただいたのですよ(^^)
心地よい短詩の世界ですね。
振り返って冗長な締まりのないこのブログ、しかも誤字や間違った文章も推敲もせずupしているわが雑さに恥ずかしくなってしまいました。
乗りかかった舟状態でupを続けてはいますが、穴があったら冬眠したいと思いました。

三種の代表的血液ガンのうち、比較的完治の確立の高い悪性リンパ腫でした。
夫も同じころ罹患して10か月で亡くなりましたが、娘はUさんにはそのことは今に至るまでずっと伏せているです。
Uさんはクラシックに造詣が深く、リタイア後はヨーロッパでオペラ巡礼をする計画を立てていたそうですが、叶わぬ夢となりくやしがっていたそうです。
結婚の好機を逃して独りの終末となったようですけど、今はそんな人が周りにたくさんいますね。
Uさんのようにご自分の始末がある程度できられる人は稀で、そういったことのできない人はどうするのでしょう。
ひとりの孤独とともに終末の不安も重なってたいへんだろうな、と想像します。
私自身は幸い家族には恵まれていますが、カロンさんが記していらっしゃるように何もできなくなり必要とされていないと感じる時期は必ず来るのでそのときのために心を強く鍛えておかなければ、と思ったりしています。
Commented by VIN0418 at 2025-11-27 21:12
★ゆりさん、コメントをありがとうございます。
娘を通して知るUさんはとてもユニークな我が道を行く人だったようです。
夫と同じころ同病になり入退院を繰り返し治療をしながら働き続けて今に至るようですが、オープンな社風なので部門全員が彼の置かれた状況を共有して心配していたそうです。
趣味の部の仲間たちも部門は違っても集結して支えるなんていい関係ですね。
反してまだ治療半ばなのに従兄弟さんたちとの間でお金に関する軋轢を感じたのは気の毒でした。
お金が絡まると途端に争いになるのは哀しいことですね。
夫の相続関係は会計士さんにお願いしましたが、我が家のようにスムーズに終わる例はあまりなく、家族間でも異を唱える人がいたりトラブルが多い、と会計士さんがおっしゃっていました。
我が家は争うほどのものもなかったのが幸いだったと思います(笑)
こうしてみると生きるのも自分の始末も大変だなあと思いますが、私もなるべく目立たないように直葬でお願いしたいほどです。
周りに感謝が伝えられる状態のときに逝きたいものです。
ゆりさんはまだまだ許してはもらえませんよ。
これからも家事雑事に励んで、そして与えられた自由を大切に使いながらご夫君と仲良く楽しく過ごす任務がありますよ。
by VIN0418 | 2025-11-26 09:13 | 日々のこと | Comments(4)